【タクシーネタ】セコムとミネラルウォーターを死守したくなる話
「今朝は寒かったねー」
齢60くらいの女性客が言う。
「少し雪が積もってましたからね。私は5時起きなので寒さが身にしみました」
若干かました。
早起き自慢をここでかましてやった。
頂きましょうか。
早起きなんですねーの一言を頂いておきましょうか。
「私は4時よ。仕事が早いの」
負けたー。
これは僕が"早起きなんですねー"をあげるしかない。
「早起きなんですねー。でもどんなお仕事なんですか?」
「倉庫の作業なの」
「結構早くから仕事が入るんですね」
「そうなの。だからいつも朝一番に私だから、セコムのスイッチ切るのよ」
「そうなんですか」
「私がいつもやってるから、私がいないと照明のスイッチの場所も、セコムを切る所も分からないんじゃないかしら」
「それじゃあおいそれと休めませんね」
「そうよ。セコム切らないと通報いっちゃうから大変よ。まずはセコムを切ってからじゃないと作業できないんだから」
どんだけセコム切ってんだよ
もうセコムを切る話はうんざりだ。
これ以上セコムを切らせる訳にはいかない。
セコムは僕が死守する。
「でも倉庫の中って寒そうですね。今朝なんかは雪もちらついていましたし、大変だったんじゃないですか?」
「最初は少し寒いけど、重い荷物を運んだりしてるから、すぐに体が温まるのよ」
「なるほど、そういうもんですか」
「そうそう。セコム切った後はすぐに重たいミネラルウォーターから運んじゃうの」
セコム切られた!
「若い子も入ってくるんだけど、ミネラルウォーター運ぶときに腰痛めちゃうのよね」
「あー腰やっちゃうとずっと付き合っていかなきゃですからねぇ」
「私はもう重たいものでも簡単に出来るから、真似しちゃうのよ」
「熟練の技ですね。全身を上手に使っているんでしょうね」
「そそ。だからミネラルウォーターも棚の中段に置かなきゃいけない時があるから、そういう時は若い子よりも私の仕事だったりするの」
「それはすごいですね」
「ミネラルウォーターは降ろす時も上手にやらないとだめよ」
どんだけミネラルウォーター運んでんだよ
ミネラルウォーターの話はもうたくさんだ。
こっちはもうミネラル過多なんだ。
これ以上ミネラルウォーターを運ばないでくれ。
「明日は金曜日だから楽だわ」
「金曜日は少ないんですか?」
「そうなのよ。うちは生協の倉庫なんだけど、金曜日は配達が少ないみたいね」
「生協でしたか。確かにうちもたまにミネラルウォーターお願いしてます」
「そうでしょう?ミネラルウォーターを中段に乗せる時は本当に大変なのよ」
さっきから何なんだよ中段て
「そういう日はセコム切った後にミネラルウォーターの中段を先にやっちゃうの」
あーセコム切られたし、ミネラルウォーターも運ばれたー!しかも中段にー!
(話の内容から推測した倉庫の中)