【タクシーネタ】呪いの先祖がガストへ行きたがる
あの、先日無線で呼ばれたお寺に行ったらね、お墓とかに突き刺してあるあの卒塔婆を持った男性が御乗車して参りまして。
でもほら、あれってさ、意外と長いじゃん。 長さには定評があるじゃん。
トランクルームにはもちろん入らなかった訳ですよ。
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となると座席になるんだけど、後部座席だけじゃちょっとね、荷が重いっていうか、荷が長いっていうか。 入りきらなかったんです。
じゃあこれ前後にしましょうと。
後ろのぎりっぎりの背もたれ部分から、助手席の右肩部分に乗せて。
斜めに。 斜めに攻めたんです。
「どうにか乗りましたねー」なんつって目的地へ。
行き先は小平霊園って場所で乗車場所からだと8000円くらいの遠距離。 有り難い。
ただほら、車ってやっぱり加速したり減速したり曲がったりでさ、結構揺れるじゃないですか。
卒塔婆は完全に固定されてる訳じゃないから、左右に揺れたり前後に動いたりわりとアグレッシブ。
こっちの左腕にぶつかって来たりする訳ですよ。
ギザギザの部分。
卒塔婆のあの肉を切り裂くためにギザギザにカットされてる部分あるじゃないですか。 あそこでじわじわダメージを与えてくるんですよ。
何か知らないけど先祖すごい怒ってない?
いやこれ先祖が乗り移る的なものなのか詳しくないから分かんないけど、仮にそうだとしたら何か恨まれてる。
絶対人違いだって。 呪い間違いとかほんと勘弁して欲しいのよ。
そっちは何かもう終了した身なのかもしれないけど、こっちは呪い間違いとか理不尽な死に方したくないんですよ。
そんな死にかた絶対成仏しないじゃん。 こっちもこっちでかなり厄介な悪霊になっちゃうよ。
まぁでも左右の揺れは卒塔婆のギザギザ部分でゴリゴリされるくらいでまだいいんです。
問題は前後の揺れ。 ブレーキなんかすると卒塔婆が前に、伸びて来るんですよね。 牙突(がとつ)ね。 先祖牙突ね。
するとカーナビにさ、牙突が直撃するんですよ。
するとカーナビのマップがスクロールされちゃって。 もうこの先祖のスクロールが半端じゃなくて。 先祖スクロールでガストが正面に表示されたりしてさ、何かしらの意思を伝えようとしてくんのよ。
いやもうあんたガストとかで飯食えるような存在じゃないから。 生命体じゃない事を自覚してくれなきゃ。 小平霊園は全く道を知らない訳じゃ無かったけどね、最短ルートかの自信は無かったんでナビに入れてたんですよ。
それを邪魔してくんのよ。 何この先祖。 あんたの先祖何なの?
それともすでに悪霊と化してて卒塔婆を小平霊園に燃やしに行こうってのを阻止しようとしてんのかな。
お客さんはスマホいじってて全然異変に気付いてくれない。
こっちの先祖スクロールされたマップを現在地に戻して、また先祖スクロールされての繰り返しバトルに気付いてくれない。
あんたの先祖だろ、なんとかしてくれよ。
これさ、カーナビの行き先入力のキーボードを出したらさ、なんか文字打ち込んで来そうで怖いんだよね。
"ガ"ス"ト"
とか打ち込んで来そうで怖いんだよ。
これだけならまぁ大丈夫かなってなるけど。 意外と良い奴かもってなるけど。
"ガ"ス"ト"で"こ"ろ"す"とか続くに決まってるんですよこの悪霊は。
何でガストでなのかは知らんけども、こいつはそういう悪霊ですよ。
まぁどうにかね、小平霊園に無事到着したんですけどね。
一旦斜めにしないと出せないから。 この呪いの先祖棒は斜めにしないと出せないから。
卒塔婆の事を呪いの先祖棒とか言っていいのか知らないけど、取り敢えずこれ出さないといけないから。
一応出すのも手伝ったりしたんだけど、最後にね、後部座席にマジックテープでくっついてる広告を先祖棒が引っ掻けてむしり取って行ったからね。 呪いの先祖の最後の抵抗かな。
まぁでも、これで全て終わった。
でも僕達の戦いはまだ始まったばかりなのかもしれない。
いつかまた第2第3の呪いの先祖棒が現れて僕らに襲いかかってくる事だろう。
僕達はそれまでの束の間の平和を享受する事しか出来ない悲しい生き物なのさ。