東京タクシーブログ 『個人タクシー目指してます』

東京都内でタクシー運転手をやりながら人間観察に勤しんでおります。タクシーやんなきゃ味わえないあんな話やこんな話。息子が3人いるのでそっちの子育てブログも更新中。




【安全運転】 プロドライバーでもよく起こす事故形態とは

我々タクシードライバーはいかに事故を起こさずに運転をするか、日々頭を悩ませているのです。
悩みすぎて抜け毛が半端じゃないです。

普段運転に気をつけているタクシードライバーだけど、自らの過失で起こしてしまう事故も当然ございます。
そんなタクシードライバーの過失で起こす事故の中で断トツに多いのはなんだと思いますか?


それは後退事故なんです。
髪の毛じゃないよ?
車の方の後退事故ですよ?

元々タクシーってすごく危険なことをやってるんです。
お客さんの指示通りに運転していれば、そりゃあ"急"のつく運転もしなきゃならない事があります。

「あっ!ここ!ここまがって!」

もう交差点の目の前なんだけど。
なんなら若干渡り終えようとしているんだけど。


「ごめん運転手さん!東京駅まで10分で行って!」

いやいやいや。
それもうほとんどロケットと同じくらいのスピードじゃん。
NASAに頼めよNASAに!


周りのドライバーさんの理解もあってタクシーの動きには警戒してくれている事も多いけど、冷静に考えればほんと危険です。

でもそれら急ハンドルや急加速、急減速が絡む事故なんかよりも、結局後退事故の方がずっと多いのは何故だろう。

お客さんが乗っている状態で後退をせざる負えなくなるケース

これはかなりキツイ状態です。

例えば迎車でお迎えにあがった先の個人宅のある道が、実は私道の行き止まりで、お客さん乗せた後にバックで出なければならないケース。

お客さんからのプレッシャーもあるし、そういう場所は必ず初めての場所だし。(知ってたら最初にバックで進入する)


のんびり時間をかけてバックしたいのに、そういう場所に限って「急ぎでお願いね」とか言われるんですよね。
もうね、ザキと一緒ですよ。
死の呪文ですよ死の呪文。


そういう時に右側の電信柱を気にしてたら左側のやや飛び出して停めてある自転車とかにぶつかるんです。
デスバイシクルです。
この時点でこの世から自転車を消し去りたくなります。

他には実車中に道を間違えた時もそうですね。
あー、もう一本先の道を曲がるんだったーって時。

時間ロスするし、下手したら料金あがっちゃうし、後ろからため息みたいの聞こえるし。
やべーつって慌ててバックしちゃうんですよね。

するとミラーに写らない高さの金属のポールに気付かないんです。
道に入るときは後退するなんて思わずに入るから大して気にもとめないんだけど、あるんですよ。
デーモンズポールが。
この世からポールを消し去りたくなります。
マッカートニーじゃないですよ?
あの人まだしばらく大丈夫そうだし。


これらタクシーならではのプレッシャーには、やはり接客でカバーするしかない。

「もしいつもより料金あがっちゃったらその分引かせていただきます、すみません、安全の為にお時間ください」

謝罪しつつゆっくり後退する。
これだけでお客さんからのプレッシャーは違いますから。


他の交通を滞らせているケース


これも結構まずい状況です。
タクシーの場合は上記のお客さん乗車状態との合わせ技もあって、後退事故リスクが最高潮に達します。

一般車両でも切り返しUターン中に車が来ちゃって煽られるってケースありますでしょ。
そういう時やばいんですよ。
いい感じにザラッザラになったブロック塀が今か今かと待ち受けています。


やはり慌てると人間ミスをします。
安全確認を最小限にしてしまいます。

結果目視確認しないで事故に繋がったりしますよね。

窓から手を出して、悪いと思ってますアピールはしておきましょう。

悪いと思ってますけど、ゆっくりやります。
悪いと思ってますけど、もうちょっとそこで待ってて。
こっちもまさかこうなると思ってなかった部分あるから。
こっちも割りと被害者だと思ってるから。
被害者同士仲良くしましょうよ。

っていう意味を込めて挨拶だけはしておきましょう。

後退時は窓を開けろ


さて、慌てずに後退する環境を作った後は技術的な部分。

ここからは五感をフル動員して事故を未然に防ぎたいんです。

そう。
嗅覚です。

体はもうゾンビなのに心は全然人間のままの人が死角にいる可能性ってあるじゃないですか。

そういう人は悪い人ではないので、臭いで存在を察知して…。

違いますね。
嗅覚じゃないですね。
聴覚ですね。

音です音。


窓を開けることによって周囲の音が聞こえるようになります。
自転車バイクが横をすり抜けたり、歩行者の話し声が聞こえたり。

使える感覚はフルに使っていきましょう。

シートベルトを外す


ミラーだけで安全に後退なんかできっこありません。
そうなると体をくねらせて窓から身を乗り出して、死角を潰していく必要があります。

ややグレーではありますが、後退する時に外してたくらいでキップ切るようなお巡りさんは聞いたことがありません。

いやどこかにはいるかも知れないけど…。

もちろん後退が終わったら直ぐに装着してくださいね。

8割後退を意識しよう

例えば方向転換の後退。
何回も切り返すとなんか下手みたいに見えて恥ずかしい。
だから極力限界まで後退するって人、多いです。

僕からみたら後者の方が恥ずかしい。

事故を起こすか起こさないか。
結果はこの二つしかないんです。

周囲の目を気にして事故の可能性を高めるようでは恥ずかしい運転と言わざる負えない。

何回でも切り返しましょうよ。
後退は絶対に安全だって位置まで。
これは鉄則です。

なるべく後退はしない


その後退は本当に必要?
左折繰り返せば良かったりしない?

慌てなければならない状況や、よく知らない場所で後退なんか危険すぎます。

できうる限り後退をしないルート選びを。
できうる限り後退をしない対応を。

上手な人ほど避けている筈です。
危険な事を知っているから。

後退事故はプロでも起こしまくる事を意識する


そう。
車は前進する乗り物です。
後退はあくまでやむを得ず行うだけです。

どんだけ運転に慣れてたって後退事故は起こします。
それを意識するだけで防げる事故もありますね。
それだけで緊張感を持ったバックが出来る事と思います。