【タクシーネタ】武蔵お婆ちゃんと手合わせした話
お婆ちゃんのお客さん。
自宅に帰るって事で住宅街の細かい部分はご案内頂いたんですね。
まあまあまあ、丁字路はまだいいんですよ。
そこは素直に曲がりましょう。
丁字路はどんとこい。
問題は十字路なんですよ。
こう、ね、十字路に差し掛かるとね。
「次の十文字を右ね」
あれ?
って。
今ちょっとした剣豪がよく使いそうな感じの響きが。
「その先の十文字は左ね」
もう出来れば武蔵と呼ばせて頂きたい。
武蔵お婆ちゃんと呼ばせて頂きたい。
復唱するときどーすんのこれ。
「はい。次の交差点を左ですね~」
とかさりげなく訂正したらなんか変な感じになっちゃうしさ。
「はい。次の十文字を左ですね~」
ちょっとそこまでは。
まんま十文字ってまだ言えない。
どうにも普段使わな過ぎて、照れがある。
武蔵お婆ちゃんはそりゃ使いなれてるんだろうからいいけどさ、こっちはちょっと剣豪とはかけ離れた私生活送ってるもんで。
ワラとか刀で斬ったことないしさ。
お腹に手術痕はあるけど、それは斬られた側だしさ。
「お主も修羅場を潜り抜けてきたようじゃの。さぞや名のある士に斬られたのじゃろう」
「いや、これあれなんです。尿膜管遺残っていう病気の手術痕なんでね。まぁある意味修羅場だったのかもしれませんけども。あと、あの、名のあるっていうか、まぁ大学病院の先生でしたけどね。勢い余ったのかなんか知らないけどね、若干ね、おちんちんも斬られちゃったんですけどね(事実)」
「あ、はい。次を左に曲がりますね~」
結果これ。
攻めの姿勢が足りないのは自覚している。
いつか「十文字」と照れがなく言える時まで。